会社・法人破産の手続きの流れ、費用や期間もわかりやすく解説
法人破産法人(会社)も個人の方と同じように、その売上や財産から債務を支払えない状態となれば、自己破産をすることが可能です。
いよいよ始まる、日本政策金融公庫などのコロナ特別貸付(いわゆるゼロゼロ融資)の返済に頭を悩ませている会社代表者の方も多いと思います。長年心血を注いできた会社を畳むことは大変に辛いことです。しかし、破産は決して人生の終わりではなく、新たにやり直すための手続きです。また、無理な経営を継続して多くの関係者に迷惑をかけてしまう前に、適切なタイミングで破産に踏み切ることも経営者として必要な決断です。
本コラムを会社の経営難にお悩みの方に参考にしていただければ幸いです。
今回は、
・法人破産の概要
・法人破産にかかる期間
・代表者への影響
・法人破産の手続きの流れ
・法人破産に必要な費用
を中心に解説していきます。
法人(会社)破産とは?
法人(会社)も、支払不能または債務超過となれば、自己破産を申し立てることが可能です。破産管財事件として裁判所に受理されて、破産管財人が選任されて会社財産の処分換価が行われます。換価の結果、配当可能な破産財団が形成できれば債権者への配当が実施されます。
これらの手続きがすべて終了すれば、破産事件が終結し、法人(会社)は消滅します。
法人が消滅することにより、法人の債務を支払う主体がいなくなりますので、法人の債務もなくなります。
個人の場合には、免責決定が出ることにより債務がなくなりますが、その点が法人と異なります。
また、個人との違いとして、個人の方は破産をしても、税金や社会保険料の支払義務は免れませんが、法人は消滅するので、法人の税金や社会保険料の支払義務もなくなります。
このように、法人破産は、法人の一切の債務がなくなるという点に大きな特徴があります。
法人破産にかかる期間
法人破産の流れは、2つの段階に分けられます。
第1段階 弁護士委任後から裁判所に申立てするまで
第1段階にかかる期間は、法人によって3か月から1年以上とかなり幅があり、当事務所では平均的に半年程度です。
法人破産に必要な費用が速やかに用意でき、かつ、会社を畳むにあたって必要な手続きをしたり、必要書類を準備したりということが速やかにできる場合には、3か月程度で申立てをすることが可能です。
法人の自己破産には一定の費用が必要ですので、その費用を工面するのに時間がかかる場合や、借りていた事務所を明け渡したり、リース物件を返却したりという対応が必要な場合には、申立てまでにある程度の時間がかかります。
第2段階 裁判所に申立てした後から手続き終結まで
第2段階にかかる期間は、最短で3、4か月程度、長い場合には1年以上かかることもあります。
大きな財産もなく、破産管財人において対処すべき事項もない場合には、債権者集会を1度開くだけで手続きが終結しますので、3か月程度で終了します。小規模な会社で、かつ、申立前の準備を丁寧にされている場合は、その多くが3か月程度で終了しています。
破産管財人において回収する財産があったり、換価した財産を債権者に配当したりする場合には、債権者集会を2回、3回と開くため、その分時間がかかることになります。
代表者はどうなる?
法人が破産した場合、当該法人の代表者個人はどうなるのでしょうか。代表者への影響について解説します。
代表者個人が法人の債務の保証人や連帯債務者になっている場合
多くの場合、法人の債務について代表者個人が保証人または連帯債務者になっています。この場合には、代表者個人も支払義務を負います。
法人が破産すれば法人の債務は消滅しますが、代表者個人の保証債務または連帯債務は消滅しないからです。
そのため、この場合には、法人と代表者個人が同時に破産を申し立てることがほとんどです。
もちろん、代表者個人に返済できるだけの財産や収入がある場合には、破産をしないこともありますし、自宅を残すために個人再生を選択するケースもあります。
代表者個人が保証人や連帯債務者ではない場合
この場合は、法人が破産しても、その法人の債務を代表者個人が負担したり、代表者個人の財産が処分されたりすることは原則としてありません。代表者個人は、法律上、法人と別人格として扱われるからです。
例外的に、代表者個人が法人に損害を与えていたり、破産の直前に法人の財産を流出させたりしていた場合には、損害賠償を請求されたり、破産後に破産管財人から責任追及されたり(否認権と言います)することがあります。
法人破産の手続き中の生活について
法人破産の手続き中であっても、代表者の方は、新しいお仕事を探して働いていただいて大丈夫です。
会社の残務処理、申立書作成の打ち合わせ、破産管財人との面接、債権者集会の出席の際には、お時間を作っていただく必要はありますが、ご都合に応じて日程調整が可能です。
法人破産の手続きの流れ
法人と法人代表者の手続は破産管財事件となります。
弁護士から業者に受任通知書を発送
弁護士に依頼した時点で、返済が止まります。弁護士から受任通知が債権者に届いた時点で、督促が止まります。
会社特有の諸問題に対する対応
従業員との関係の整理、売掛金の回収、在庫商品等の適正な処分、賃借物件の明け渡しなど、必要な対応をします。
必要書類の収集と家計簿の作成
法人及び代表者個人に関する必要書類を収集していただきます。また、家計の立て直しのため家計簿をつけていただきます。家計簿1か月分を裁判所に提出する必要もあります。
自己破産の申立て
弁護士と打合せをしながら、申立書を作成し、裁判所に提出します。
破産手続開始決定
裁判所の書類審査において問題がなければ、破産手続開始決定が出されます。破産手続開始決定と同時に、破産管財人が選任されます。法人及び代表者個人宛ての郵便物が管財人に転送されるようになります。
破産管財人との面接
破産管財人の事務所に出向いて、破産管財人と面接をします(弁護士も同行します)。この面接において、借金に至った経過や財産関係、今後の生活の目途などについて確認されます。
債権者集会
弁護士と一緒に裁判所に行っていただきます。債権者も出席することができる集会で、破産管財人から財産関係等についての報告がなされます。金融機関が出席することはまれですが、取引先や従業員の方は出席されることがあります。免責審尋期日も兼ねていますので、裁判官から、今後の生活の注意点などのお話がされます。
免責決定
財産の換価及び配当が終われば、最後の債権者集会ののち、代表者個人については免責決定が出されます。法人については免責という概念がないので、破産手続きの廃止または配当手続きで終了します(法人は消滅)。
法人破産に必要な費用
破産申立てには、①実費、②引継予納金(管財人報酬)、③弁護士費用がかかります。
実費
- 申立手数料(印紙代)
- 予納郵券
- 官報公告費用
- その他コピー代や郵送費、弁護士の交通費など
法人の規模や債権者数にもよりますが、合計でおおよそ3万円から5万円程度のことが多いでしょう。
引継予納金(管財人報酬)
法人の破産は、破産管財人が就任する破産管財事件となります。
そのため、管財人の報酬として引継予納金が必要となります。
横浜地方裁判所では弁護士申立ての破産事件では、引継予納金は最低金額20万円とされています。
司法書士が書面作成代行をした場合の破産事件では、最低金額30万円とされています。
もっとも、この金額以上に法人の資産が残っている場合には、原則としてすべて引継予納金として破産管財人に納め、管財人報酬を除いた金額を債権者への配当に充てることになります。
弁護士費用
法人破産を弁護士に依頼する場合には、弁護士費用が必要になります。
弁護士費用は自由化されていますので、弁護士によって異なりますが、弁護士費用の相場として最低でも55万円以上のことが多いです。これに法人の規模や債権者数によって加算があります。
このように、法人破産では、個人の破産よりまとまった費用が必要になりますので、資金に余裕がある早い段階で弁護士に相談するとスムーズな申立てにつながります。
まとめ
法人破産は、個人の破産に比べ、手続きが複雑であり、対応すべき事柄も多岐にわたります。そのため、個人の破産だけではなく、法人の破産も多数手がけている弁護士に相談されることをお勧めいたします。
当事務所では、多種多様な業種の法人破産をお手伝いしてきた実績がございます。また、裁判所から選任される破産管財人の経験も豊富にありますので、裁判所が法人破産の何を重視しているかを熟知しております。会社の経営難にお悩みの方は、是非お気軽にまずは無料相談をご利用ください。
当事務所では、相続、離婚などの家事事件、多重債務問題、児童虐待問題を中心とした子どもの福祉に関する問題を主にお受けしております。みなさまに来ていただき、お話しいただき、そしてほっとしていただける場所となることを目指して、心を込めて丁寧に対応しております。どうぞお気軽にご相談ください。