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自己破産しても手元に残せる財産について弁護士が解説します

自己破産をすると、財産をすべて持っていかれてしまうとか、家に人が来て財産を調査されるのではないか、などというイメージをお持ちの方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。自己破産をしても手元に残せる財産は意外とあります

当事務所では、長年にわたる申立実績があるとともに、裁判所から選任される破産管財人の経験も豊富ですので、裁判所がどんな財産に着目しているのかを熟知しています。

そこで今回は、自己破産をしても残せる財産は何なのか、手放さなければならない財産は何なのかを詳しく解説いたします。

今使っている家財道具や家電製品、車、保険、金融資産、見落としがちなところで退職金見込み額や未分割の相続財産も財産の一種なので、確認していきましょう。

なお、以下の解説はすべて横浜地方裁判所(神奈川県内)における運用ですが、ほぼ全国的に同様の運用がされています。

手元に残せる財産の基本ルール

手元に残せる財産の基準は次のとおりです。

99万円以下の現金

20万円未満の財産(現金以外) ただし一部例外あり

・差押え禁止財産(家財道具など)

現金99万円ルールの注意点

現金といっても、弁護士委任直前に預金から出金して現金にしたり、保険を解約して解約返戻金を受領したりした場合には、もともとの財産(預金や保険)があったものとしてその金額が評価されますので、注意が必要です。

実際には、経済的に苦しい方が多額の現金をタンス預金などとして持っていることはほとんどありませんよね。私の実感では、現金99万円ルールが直接適用される場面はあまり多くないように思います。

もっとも、後述する自由財産拡張の判断においては、一定の基準とされています。

20万円未満の財産について

現金以外の財産は、原則としてその評価額(今、売却した場合の金額)が20万円未満であれば、手元に残すことができます

財産ごとに見ていきましょう。

同時廃止事件(簡易な破産手続)では、初年度登録から6年が経過した自動車については、原則として無価値として扱われます。査定を取る必要もありません。

ただし、外国車や特別に価値のある車については、年数に関わらず査定額の確認を裁判所から求められることがあります。この場合も査定額が20万円未満であれば問題ありません。

破産管財事件においては、初年度登録から6年が経過した車であっても、破産管財人から車の査定額の確認を求められることがあります。実際には、初年度登録から6年が経過した車であっても20万円以上の価値があることは珍しくありませんので、その場合は車両の引き揚げがされてしまう可能性があります。

私の実感として、この破産管財事件における財産の評価について、横浜地方裁判所は東京地方裁判所より、やや厳しい運用をしている印象があります。私が破産管財人に就任した破産手続きで、東京の弁護士と話をする機会がありますが、東京ではここまで厳しくないという感想を言われる方は結構いらっしゃいます。

このように同じ自己破産でも、同時廃止事件か破産管財事件かで、車の扱いが若干違うことがありますので、注意が必要です。

保険

自己破産申立時の解約返戻金見込み額が20万円未満であれば、保険契約をそのまま継続できます

ただし、あなたのすべての保険の解約返戻金見込み額の合計額が20万円未満であることが必要で、解約返戻金見込み額が合計で20万円以上のときにはすべての保険を解約し、裁判所に納める必要があります。

 

手元に残せる場合

生命保険15万円

 

手元に残せない場合

生命保険10万円、学資保険15万円という場合は合計25万円なので、2つとも解約する必要があります

 

しかし、この20万円という金額を超えていても、保険契約を継続できる場合があります。

持病があって同じ保険にはもう入れないという方や、加入中の保険を使って病気の治療中である場合など、その保険がその方の生活に必要不可欠と評価できるときには、保険をそのまま維持できることがあります

具体的には、解約返戻金相当額を別に用意して裁判所に納める方法や、自由財産の拡張を裁判所(破産管財人)に求める方法があります。自由財産拡張については、後で解説します。

見落としがちなところで、給与天引きで保険料を支払っている保険も確認なさってください。給与明細の控除欄を確認し、そこに保険料という項目の天引きがある場合には、勤務先経由で何らかの保険に入っているということです。この保険についても、解約返戻金額を確認する必要があります。

退職金

退職金は、破産手続開始決定時における退職金見込み額の8分の1が財産として評価されます。その金額が20万円未満であれば問題ありません

20万円以上の場合には、その相当額を裁判所(破産管財人)に納める必要があります。

なお、会社によっては退職金の一種として確定拠出年金や中小企業退職金共済に加入している場合がありますが、これらは差押え禁止財産であるため、自己破産では財産として扱われません。つまり、いくらであってもそのまま保有できるということです。

同じ退職金でも、その内容によって自己破産における扱いが全く異なってきますので、勤務先の退職金を確認する際には、その見込み金額だけではなく、種類も確認する必要があります。

勤続年数が長い方、公務員の方などは、退職金見込み額が高額の場合がありますので、必ずご確認ください。

では、退職金評価額が20万円以上の場合には、どうしたらよいのでしょうか。そんなに多額のお金、すぐには用意できないよ、という方も多いかと思います。

まず、ご親族の援助などでお金を用意してから申し立てをする方法があります。金額的に可能であればよいですが、お金が貯まるまでに時間がかかり過ぎる場合には他の方法を検討します。

2つ目の方法として、自己破産の申立てをしてから、破産管財人に分割で積み立てていくという方法があります。

3つ目の方法として、個人再生をすることも一案です。詳しい要件の検討が必要ですが、個人再生では3年から5年の長期で支払いをしていくことが可能です。

金融資産

投資信託、株式、勤務先の財形貯蓄、持ち株なども財産です。

そして、株式は20万円未満でも裁判所に納めるべき財産とされていることに注意が必要です。明記はされていませんが、投資信託も同様の扱いになるものと思われます。

最近はNISAを利用している方も増えてきましたが、NISA口座で運用している金融資産も財産として評価されます。

会社の給与天引きで、財形貯蓄や持ち株購入をしている場合も、財産として扱われますので、確認が必要です。給与明細の控除欄を確認し、そこに税金や健康保険料以外の天引きがある場合には、それが何の天引きか確認する必要があります。

未分割の相続財産

これは見落としがちで、とても大事なのですが、ご両親が亡くなるなどして相続が発生したけれど、遺産分割協議ができておらず、亡くなった方の名義のまま遺産があるという場合は要注意です。

たとえば、お父様が亡くなって、相続人が母、兄、あなたで、遺産として実家があったとします。そうすると、ご実家について4分の1の相続分があなたにはあります。自己破産ではこの相続分があなたの財産として評価されることになります。

もし、ご両親のどちらかが亡くなっていて、まだご実家の名義変更がされていないなどの事情がある場合には、必ずご相談時にお話しなさってください。

差押え禁止財産(家財道具等)

差押え禁止財産とは、生活に必要不可欠なものであるため法律上差押えが禁止されている財産です。

日常的に使用している家財道具、家電製品などは、この差押え禁止財産に当たります

差押え禁止財産は、自己破産においても財産として扱われることはなく、手元に残すことができます。

私の経験上、裁判所や破産管財人が自宅に財産の確認に来たことは一度もありませんので、家財道具等についてはあまり神経質になる必要はないと思います。

そのほか問題になる財産

パソコン

今やパソコンは人によっては生活に必要不可欠と言えるものですが、評価額が20万円以上のパソコンは売却して裁判所に納める必要があります。もっとも評価額とは、購入価格ではなく、現在売却した場合の金額ですので、そこまで高額なパソコンは実際は少ないものと思います。

趣味のもの

洋服、何らかのコレクション、アクセサリーなど、趣味や楽しみのために購入したものがある場合、やはり評価額が20万円以上の場合は売却して裁判所に納める必要があります。

また、自己破産の原因が趣味のための浪費であり、それにより購入したものが手元に残っている場合には、それらを手元に置いたままにすることは道義上許されないとして、金額にかかわらず売却するように破産管財人から指示されることがあります。

財産を手元に残す方法

以上の基準により本来であれば裁判所(破産管財人)に納めるべき財産であるものを、手元に残せる場合があります。

親族の援助や新得財産などで相当額を用意する

本来、対象財産を処分して裁判所(破産管財人)に納めるべき金額を、別途、親族の援助などで用意して、代わりに納めることで、破産管財人としては換価すべき財産を回収したことになりますので、対象財産を処分しなくてよい場合があります。

自由財産の拡張を求める

本来は対象財産を処分しなければならないけれど、その財産の必要性が高い場合に、例外的にそのまま保有を認めてもらう制度です

これは同時廃止事件(簡易な破産手続き)では認められていない制度ですし、自由財産として認めてほしい20万円以上の財産があるということですので、当然に破産管財事件となります。

自由財産の拡張が認められる代表的なものに、先ほど述べた保険があります。

持病があり、同じ保険に加入することができない場合などは、必要性が高いといえるでしょう。

この自由財産の拡張を認めるか否かの判断の際に、先ほどの99万円ルールが適用されるとの見解もあります。すなわち、99万円以下であれば自由財産の拡張が認められるという考え方です。

しかし、私の個人的印象ではありますが、横浜地方裁判所の運用では、前提として必要性が相当程度高い必要があり、そうでなければ99万円以下でも自由財産の拡張は簡単には認められない傾向があると思います。

もっとも99万円という金額が一定の基準になっていることは間違いなく、それ以下の財産であれば、自由財産の拡張が認められる可能性は十分あります。

したがって、どうしても手元に残したい財産がある場合には、破産管財事件を申し立て、自由財産の拡張を求めることは有益な手段です。私自身、破産管財人と協議し、その財産を手元に残す必要性を理解してもらい、自由財産の拡張が認められたケースを多数経験しております。

まとめ

以上に述べてきました通り、自己破産をしても手元に残せる財産は意外とあります。当面の日常生活に困ることはないと考えていただいて大丈夫でしょう。

一方で、どうしても手放さなければならない財産もありますし、破産管財人と協議することで手元に残せる財産もあります。

破産手続きでは手放さなくてはならない財産を手元に残したい場合には、個人再生を検討することも一案です。

みなさんには、ぜひ正確な知識を持って債務整理の手続きの選択をしていただきたいと思いますので、まずは無料相談でお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

新井 聡子弁護士 (神奈川県弁護士会所属)

SATOKO ARAI

当事務所では、相続、離婚などの家事事件、多重債務問題、児童虐待問題を中心とした子どもの福祉に関する問題を主にお受けしております。みなさまに来ていただき、お話しいただき、そしてほっとしていただける場所となることを目指して、心を込めて丁寧に対応しております。どうぞお気軽にご相談ください。

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