自己破産前にやってはいけないこと 絶対に押さえておきたい2つのポイント |横浜での債務整理・借金問題は女性弁護士へ 【横浜もえぎ法律事務所】

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自己破産前にやってはいけないこと 絶対に押さえておきたい2つのポイント

自己破産をする前にやってはいけない大事なポイントがあります。

それは、「財産隠し」と「一部債権者への返済」です。

これらがあると、自己破産ができない、借金免除が認められない、借金免除が認められるとしても相応の金額を破産管財人に納めるよう求められる、などの大きなデメリットが生じる可能性があります。

「財産隠し」と「一部債権者への返済」なんて、やってはいけないに決まっていると思われるかもしれませんが、そんなつもりはなくやっていたことがこれらに該当してしまう場合が意外にありますので、注意が必要です。

本コラムでは、自己破産前にやってはいけない「財産隠し」と「一部債権者への返済」について、詳しく解説していきます。

 

財産隠し

 

財産の贈与

自己破産のご相談に来られた方が、「自分には財産は一切ありません」とおっしゃるのですが、よくお話を聞いていくと、ご相談の直前に

妻と離婚して家を財産分与で譲渡した

車を息子に名義変更した

相続した実家を処分してその代金を娘にあげた

というお話が出てくることがあります。

 

これらの行為は、財産隠しとみなされる可能性があります。

財産を隠すという意図はなかったとしても、すでに自己破産をしなくてはならない経済状態であったときに、財産を無償で譲渡する、贈与するという行為をすると、自己破産の手続き上大きな問題となります。

 

まず、借金免除が認められない免責不許可事由の一つである、不当な財産処分とみなされる可能性があります。すなわち、借金免除が認められない可能性があるということです。

 

次に、破産手続きにおいて、すでに贈与した財産を破産管財人が取り戻す手続きをとる可能性があります。これを否認権といいます。破産管財人から贈与の相手に対し、すでに贈与した財産を戻せと請求し、場合によっては訴訟を提起することもあります。結局、贈与の相手方に迷惑をかけてしまうということです。

 

贈与した財産の価格が大きい場合には、借金免除が認められない可能性があるため、自己破産以外の選択肢を検討せざるを得ないことになります。

具体例:

借金が1000万円あるが、昨年、妻に3000万円相当の自宅を財産分与により譲渡していたケース

→自己破産を断念し、任意整理を選択

 

贈与した財産の金額がそこまで大きくない場合は、その金額を工面して破産管財人に納めることで、免責を許可してもらうようお願いすることになります。

具体例:

借金が1000万円あるが、昨年、息子に100万円相当の車を贈与していたケース

→息子さんに車を売却してもらい、その代金を破産管財人に納めることで、免責を許可

 

なお、離婚に伴う財産分与については、財産分与として相当な金額(通常は共有財産の半分)を譲渡したのであれば、不当な財産処分にあたらないと認定してもらえる可能性が高いでしょう。例えば、離婚時の預貯金を折半にした場合などです。

ただ、その財産分与が相当な金額であったのかが破産管財人の調査対象になります。自己破産直前に配偶者に財産を譲渡しているケースは、離婚の財産分与にかこつけた典型的な財産隠しの場合が少なくないので、破産管財人の調査は厳密です。適正な金額の財産分与であったことが説明できるよう、きちんと不動産や車の査定をとって金額を決める、関連資料を残しておくなどの対策が必要です。

 

財産を不当に安い価格で売却すること

財産を無償で譲渡することが問題なら、安い金額で売却することはどうでしょうか?

やはり、これも財産の不当な処分として免責不許可事由に当たります。

ですので、自己破産前に自宅や車を売却する場合には、査定をいくつか取り、適正な金額で売却することが大切です。特に、親族に財産を売却する場合には不当に安く売却したのではないかと疑われますので、より注意が必要です。

そして、受け取った売却代金の使い道についても、破産管財人の調査対象になりますので、くれぐれも浪費やあとで述べる「一部債権者への返済」に充てることがないようにしてください。

 

法人の場合でも、財産を不当に安く処分することは問題になります。

経営状態が悪化してから、会社の資産を取引先に不当に安く譲渡するとか、100万円の買掛金の代物弁済として1000万円の機械を譲渡するなどの行為をすると、あとから破産管財人が相手方に対し、取り戻しの請求をすることになります。

 

遺産分割前の相続財産がある場合

例えば、父母が亡くなり実家が残されたが、実家の名義変更がされていない場合、実家につき法定相続分に相当する持ち分を持っているということになります。

多くの場合、財産を隠すという意図はないと思いますが、破産管財人が法定相続分に相当する財産を回収することになります。すなわち、他の相続人と遺産分割協議をして、法定相続分に応じた金額を回収するということです。

前述の例でいえば、実家に兄弟が住んでいて、実家を売却せずにそのまま住み続けたいと希望する場合は、実家の査定額のうち法定相続分に相当する金額を、実家の取得を希望する兄弟が支払うことになります。

金額が大きくなる場合もありますので、自己破産を考えたときには、名義変更がされていない相続財産がないかを必ず確認する必要があります

 

一部債権者への返済

 

破産手続きの直前に、一部の債権者にだけ返済すること(「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といいます)は債権者平等を害するため、免責不許可事由とされています。

 

親族や友人にだけ返済すること

これは典型的な偏頗弁済に該当しますので、返済してはいけません。

どうしても返済したいという場合は、自己破産手続きが終了した後に任意に返すことはできます。ただ、生活の再建のために自己破産をしたのですから、安易な返済は慎重にお考えください。

 

また、「個人からの借り入れは破産の対象ではないと思っていた」という理由で、自己破産を弁護士に依頼する際に、個人の債権者を弁護士に伝えず、弁護士委任後も偏頗弁済を続けてしまうケースがあります。

個人の債権者も、カード会社や銀行等と同様に扱われますので、返済はできません。

この返済も偏頗弁済として免責不許可事由に該当してしまいます。

弁護士委任後に返済してしまった金額については、破産管財人が相手方に対し、すでに支払った金額の取戻しを請求したり、破産者本人が返済額と同額を用意して破産管財人に納める必要が生じたりしますので、注意が必要です。

 

車やiPhoneのローンだけ支払い続けること

車が手元にないと生活に困るから、iPhoneがないと困るから、という理由で、これだけは自己破産の手続きから外したいとおっしゃる方がいますが、それはできません。返済を継続すると、これも偏頗弁済に当たります

車とiPhoneは、多くの場合、完済するまで所有権が売主に残る契約となっています(「所有権留保」といいます)。自己破産をする場合は返済ができなくなりますので、車やiPhoneは債権者に引き揚げられます

同じように分割払いで購入した家電製品も多くの場合所有権留保がついているので、引き揚げ対象になりますが、換価価値が乏しいため債権者が引き揚げを求めないケースも多いようです。

ただ、アップル製品(iPhoneiPad等)は引き揚げを求められることがほとんどですので(2024年時点)、代わりに安い端末を購入していただくなどの対応が必要になります。

 

生活費支払い用のクレジットカードを返済すること

後払い決済の支払いをすること

 

公共料金支払いや食料品購入のために利用しているクレジットカードがあり、それを翌月一括払いで支払っている場合や、ペイディなどの後払い決済を利用して翌月払いとしている場合などにおいて、リボ払いなどの分割払いではないので支払ってよいものと考える方がいらっしゃいますが、これらも債務となりますので、弁護士委任後は支払いができなくなります。

弁護士に委任の際には、何を支払ってよいのか、何を支払ってはいけないのかをよくご相談ください。

 

公共料金などをクレジットカード払いにしている場合は、口座引き落としかコンビニ払いに変更することが必要となります。

 

税金・社会保険料の滞納分は支払えます

 

税金や社会保険料は、破産手続きにおいても優先的債権として扱われますし、個人の場合は非免責債権として自己破産をしても免除されません

滞納をそのまま放置すれば、預金や給与の差し押さえをされることもありますので、これらの滞納は自己破産手続きに関わらず支払う必要があります。役所と分割払いの話し合いをなさってください。

なお、個人再生をする場合は、裁判所に申し立てる前に滞納税金の分割払いを役所と合意しておくことが必要になりますので、滞納を解消しておくか役所と合意をしておくことが不可欠です。

 

ただし、法人の場合は、破産手続き終了により法人が消滅しますので、支払い主体がなくなるため法人の税金・社会保険料の支払い義務もなくなります。

 

まとめ

自己破産の免責不許可事由としては、上記以外に、浪費やギャンブル、嘘をついてお金を借りたなどの事由もあります。

 

詳しくはこちら

自己破産を失敗することはありますか?

 

 その中でも、「財産隠し」と「一部債権者への返済」があると、破産手続きが非常に困難になる場合がありますので、注意が必要です。

大切なのは、ご相談の際に洗いざらい正直にお話ししていただくことです。早い段階で弁護士と正確な情報共有ができますと、手続きの選択や準備を無駄なく行うことができ、結果的にはスムーズな手続き遂行が可能になります。

皆さんの中には、恥ずかしいとか怒られるのではないかというお気持ちをお持ちの方も多くいらっしゃいますが、当事務所では様々なご事情のある方のご相談をお受けしてきましたので、どうぞ安心してご相談ください

 

この記事の監修者

新井 聡子弁護士 (神奈川県弁護士会所属)

SATOKO ARAI

当事務所では、相続、離婚などの家事事件、多重債務問題、児童虐待問題を中心とした子どもの福祉に関する問題を主にお受けしております。みなさまに来ていただき、お話しいただき、そしてほっとしていただける場所となることを目指して、心を込めて丁寧に対応しております。どうぞお気軽にご相談ください。

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