破産管財人とはどんな人?注意点も解説
法人破産自己破産破産手続きについて調べる中で、破産管財人という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃることでしょう。
破産手続きには大きく分けて同時廃止事件と管財事件の2種類があり、このうちの管財事件の場合に裁判所から選任されるのが破産管財人です。
今回は、破産管財人とはどんな立場で何をする人なのかについて解説いたします。
目次
どういう場合に破産管財人が選任されるの?
破産管財人は次のような場合に選任されます(管財事件になるということです)。
・法人の場合
・法人代表者または個人事業主である場合
・20万円以上の資産がある場合
・免責不許可事由がある場合
このような場合では、破産手続きを進めるにあたって、次に述べる通り様々な調査が必要となります。
その調査の役割を担うのが破産管財人です。
破産管財人は何をするの?
破産管財人は、
・資産調査及び換価
・配当手続き
・免責調査
・生活指導
を主な業務とする、破産手続き上の権限を有する人です。
資産調査及び換価
破産は、破産者の財産を処分してそれを債権者への返済に充て、それでも返済できない分を免除してもらう手続きです。
ですから、破産者が財産隠しなどの不正をしていないか調査をして、その財産を把握する必要があります。この役割を担うのが破産管財人です。
破産管財人は、この資産調査のために、破産者あての郵便物を破産管財人のもとに転送させてその内容を確認する権限がありますし、破産者の預金の取引履歴を調査したり、預金や保険を解約したりする権限があります。
そして、破産管財人はその把握した財産の換価処分業務も行います。
配当手続き
破産者の財産を処分して得られた資金を債権者に公平に分配する手続きを「配当」といいます。
これも破産管財人が行います。
免責調査
免責決定とは、借金の免除を認める決定のことです。
個人の場合は、破産決定を受けても当然には借金が免除されるわけではなく、免責決定を受けて初めて借金がなくなります。しかし、破産法上、浪費やギャンブルなどの免責不許可事由がある場合には免責が許可されないこととなっています。
そこで、免責不許可事由があるかどうか、免責不許可事由がある場合でも裁量的に免責を許可することが相当かどうかを調査する必要があります。
この免責調査を行うのも破産管財人です。
具体的には、破産に至った経過を確認する中で、説明のつかないお金の使い道がないか、ギャンブルなどに使っていないかなどの調査をします。そして、免責不許可事由があった場合には、なぜそういうことをしてしまったのかについて破産者に振り返りをしてもらい、今後二度と同じことをしないためにはどうしたらよいかなどの指導をすることになります。
この調査の結果から、破産管財人は免責が相当かどうかの意見を裁判所に提出します。裁判所はおおむねこの破産管財人の意見に従って判断しますので、破産管財人の調査に協力することは非常に重要です。
生活指導
破産は、破産者の経済的更生のために、債権者の犠牲のもとで借金を免除する手続きです。このような借金の免除が何度も認められてよいはずはありませんので、今後、同じようなことを繰り返さないようにしなくてはなりません。
そのために、破産管財人は、破産者に今後のための生活指導を行います。具体的には、破産者に毎月の家計簿の提出を求めたり、家計で改善できる点をアドバイスしたり、場合によっては破産者に反省文を作成してもらうこともあります。
破産管財人はどうやって選ばれるの?
このように破産管財人は、破産者の資産調査及び免責調査をする立場ですので、中立公平である必要があります。
そこで、破産管財人は、裁判所が破産者とは利害関係のない弁護士から選任しています。ですので、誰が破産管財人になるのかは裁判所が決定するまでわかりません。
破産管財人が選任された場合の注意点3つ
破産管財人の調査に協力する必要があります
破産者には、破産管財人の調査に協力する法律上の義務があります。
加えて、破産管財人は免責に関する意見を裁判所に提出する立場の人ですので、免責を許可してもらえるよう、その調査には真摯に協力をし、生活の再建が可能であることを理解してもらう必要があります。
郵便物の転送がかかります
破産手続きが始まってから債権者集会までの間、破産者あての郵便物が破産管財人に転送され、内容の確認がされます。
これは破産管財人による調査の一環です。私もこの転送郵便物から、破産者ご本人が忘れていた保険契約が見つかったり、友人からの手紙で破産前の浪費(海外旅行など)が発覚したりした経験があります。
なお、転送された郵便物はあとで返してもらえます。
転居や旅行、出張の許可が必要です
転居等をする場合には、破産管財人に許可してもらう必要があります。ただ、通常は問題なく許可されることがほとんどです。
申し立て前の準備が大切
これまで見てきたとおり、破産管財人は、破産事件において大きな権限があります。
しかし、破産申し立て前に、代理人である弁護士ときちんと打ち合わせをし、財産を誠実に開示し、免責不許可事由がある場合にも振り返りと反省をしてから申し立てをすれば、破産管財人による調査を受けても、新たな問題が発覚することはありませんので、心配いりません。
申し立て後に、破産管財人による調査によって新たに発覚することが一番よくありませんので、代理人弁護士と十分に打ち合わせをして堅実な申し立てをすることをお勧めいたします。
弁護士新井は、横浜地方裁判所から多数回、破産管財人に選任されています。自身の破産管財人の経験から、どういった場合に破産管財人が選任されるのか、そして破産管財人が何をどうやって調査するのかを熟知しておりますので、管財事件になりそうなケースでも安心してご相談いただければと存じます。
当事務所では、相続、離婚などの家事事件、多重債務問題、児童虐待問題を中心とした子どもの福祉に関する問題を主にお受けしております。みなさまに来ていただき、お話しいただき、そしてほっとしていただける場所となることを目指して、心を込めて丁寧に対応しております。どうぞお気軽にご相談ください。