自己破産を失敗することはありますか?
自己破産「自己破産を失敗することはありますか?」
「自己破産が認められないことはありますか?」
「自己破産に失敗したらと思うと、破産に踏み切れない」
こういったご質問、お悩みを受けることがよくあります。
そこで、今回は、自己破産を失敗することがあるのかどうかについて解説いたします。
目次
「自己破産を失敗する」とはどういうことか?
まず、皆さんのイメージしている「自己破産を失敗する」とはどういうことなのでしょうか。
自己破産を進める場合、
① 弁護士に自己破産を依頼する
② 自己破産申し立ての準備をする
③ 裁判所に自己破産を申し立てる(具体的には裁判所に破産免責申立書を提出する)
④ 裁判所から「免責決定」(借金を免除するという決定)を出してもらう
という流れになります。
この流れの中で、皆さんが心配されているのは、裁判所から免責決定を出してもらえないケースのことと思われます。
すなわち、自己破産を申し立てたにも関わらず免責決定を出してもらえなかったらどうしよう、というお悩みです。
この点につき結論から言いますと、この意味での「自己破産に失敗する」ということは極めてまれであり、ほぼ100パーセントに近い方が免責決定を得ていると言えるでしょう。
以下にさらに詳しくみていきます。
そもそも自己破産ができない場合があります
では、借金があれば誰でも自己破産ができるのでしょうか。
それはそうではありません。
もしそのようなことになれば、誰も安心してお金を貸すことができず、社会が不安定になってしまいます。あくまでお金は返す前提で借りるものです。
そのため、自己破産ができない場合が定められています。
支払い不能ではない場合
収入や財産があって、それで支払いができるのであれば、自己破産はできません。
例えば、300万円の借金がある場合、年収が100万円の方は支払い不能であるとして自己破産ができる可能性が高いですが、年収が1000万円の方はよほど特別な事情がない限り、支払い不能とは認められず、自己破産は難しいと思われます。
収入から借金を払えるかどうかを確認するために、裁判所は自己破産申し立てにあたって「家計の状況」の提出を求めています。収入から必要な生活費を支払い、その残りの金額で借金を返済できる家計の状況であれば、支払い不能とは言えないと判断されます。
また同様に、借金があっても借金の金額を上回る価値のある財産がある場合には、やはり支払い不能とはいえないため、自己破産はできません。
このように支払い不能かどうかは、借金の金額と収入や財産とのバランスから判断されます。
一つの目安として、年収以上の借金がある場合には支払い不能といえる可能性が高いと言えるかと思いますが、年収が高くても扶養家族が多くて生活費がかかる方はもっと少ない借金でも破産が認められる場合がありますし、逆に同居のご家族に年収が高い方や資産の多い方がいる場合には支払い不能の認定が厳しく判断される場合もあります。
支払い不能の判断は、このようにケースバイケースですので、債務整理に詳しい弁護士に相談されることをお勧めいたします。
手放したくない財産がある場合
前述の通り、借金を上回る財産がある場合には支払い不能とは言えないため、自己破産をすることができません。
借金を上回る財産ではないとしても、自己破産をする場合には裁判所(破産管財人)に納めなくてはならない財産を、そのまま保有したい場合には自己破産を選択することができません。
例えば、住宅ローンが残っている自宅、車、保険契約などです。
この場合は個人再生が適していることが多いので、債務整理に詳しい弁護士と相談されるとよいでしょう。
※車や保険契約などは、自己破産をしても自由財産として手元に残せる可能性があります。
詳しくはこちら コラム「自己破産をしても手元に残せる財産について弁護士が解説します」
自己破産申し立てに必要な書類を準備できない場合
自己破産申し立てにあたっては、収入や財産、生活状況を確認するために、裁判所から様々な書類の提出を求められます。
◇収入に関する書類
給与明細、源泉徴収票、課税証明書など
◇財産に関する書類
通帳、ウェブ通帳の取引明細、車検証、生命保険証券、退職金見込み額など
◇生活状況に関する書類
家の賃貸借契約書、家族の収入や財産に関する資料
特に皆さんが苦労される書類は、勤務先の退職金見込み額に関する書類と、ご家族の収入に関する書類です。
多くの方が何とか工夫して書類を収集されていますが、ごくまれにどうしてもご家族の収入資料を提出できないなどの理由で任意整理を選択される場合があります。
債務が非免責債権である場合
個人の税金・社会保険料及び養育費・婚姻費用は非免責債権とされており、自己破産をしても免除されません。
債務の多くがこれらの非免責債権である場合には、自己破産をしても借金問題が解決しないという意味で、自己破産ができない場合と言えるでしょう。
著しい免責不許可事由がある場合
破産法第252条1項には次のような免責不許可事由が定められています。
免責不許可事由があると、免責が認められないこととされています。
免責不許可事由の例
・不当に財産を減少させた
・不当に借金を負った
・一部の債権者にだけ返済をした(偏頗弁済)
・浪費やギャンブルのための借金
・裁判所に嘘の説明をした
・破産管財人の業務を妨害した
・過去7年以内に免責決定を受けている
もっとも、免責不許可事由があっても裁判所は裁量で免責を認めることができます(破産法第252条2項。)
自己破産をする方の中には、多かれ少なかれ浪費やギャンブルをしていた方は珍しくありません。
たとえこのような免責不許可事由があったとしても、きちんと振り返りをして真摯に反省をし、生活を立て直してから、自己破産の申し立てをすれば免責が認められる場合がほとんどです。これを裁量免責といいます。
しかし、あまりに著しい免責不許可事由がある場合には、免責が認められない可能性がありますので、この場合は他の方法を検討することになります。
次のような事例が裁判例集に掲載されています。
免責が不許可とされた事例
・離婚して氏が変わったこと及び離婚給付金を受け取っていたことを裁判所にも破産管財人にも申告しなかったケース(財産隠しと虚偽説明)
・債務があるにもかかわらず、妻に不動産を無償で譲渡し、その数年後に破産を申し立てたケース(不当な財産処分)
・悪質商法で多額の借り入れをしたうえ、不当に資産を流出させたケース(不当な債務負担と不当な財産処分)
・預金や賃料収入があるにも関わらず破産申し立て時に申告せず、その上、破産管財人に対して数々の妨害行為を行ったケース(財産隠しと破産管財人の業務を妨害)
以上の事例をまとめますと、次のような場合には免責が認められないと考えられます。
・財産隠し
・極めて悪質な債務負担行為
・虚偽説明や破産管財人業務への妨害行為
逆に言えば、ここまで悪質な行為はなく、借金の原因について真摯に反省をし、収入および財産について正直に申告をすれば、免責は認められるということです。
自己破産ができない方には他の方法をお勧めしています
当事務所では、これまで述べてきたような自己破産ができない方や自己破産が難しい場合には、一か八かの自己破産を申し立てることはしておりません。
この場合には、その理由をご説明し、個人再生か任意整理をお勧めしております。
まとめ
以上の通り、「自己破産を失敗する」、すなわち、自己破産を申し立てたにも関わらず免責が認められないということは極めてまれで、ほとんどありません。
過去にしたことは変えられませんが、仮にそこに問題があってもそれを真摯に反省し、正直に裁判所に申告をすれば、裁判所は免責を認めてくれます。
当事務所では、自己破産ができない特別な事情がない限り、自己破産を希望される方には、免責が得られるまで責任をもって自己破産手続きをお手伝いしておりますので、安心してお任せください。
ご自分が自己破産をできるのかどうかご不安でしたら、是非一度お気軽にご相談ください。
当事務所では、相続、離婚などの家事事件、多重債務問題、児童虐待問題を中心とした子どもの福祉に関する問題を主にお受けしております。みなさまに来ていただき、お話しいただき、そしてほっとしていただける場所となることを目指して、心を込めて丁寧に対応しております。どうぞお気軽にご相談ください。